「お店らしさ」を見失わない ― 流行りに流されないメニュー戦略
カフェを経営していると、どうしても気になってしまうのが「流行り」や「映え」。
SNSで話題になっているメニューや、他店で売れている商品を目にすると、「自分のお店でも取り入れたら売れるのでは?」と考えてしまうのは自然なことです。
しかし、ここで気をつけなければならないのは、「お店のコンセプトや雰囲気にそぐわないメニューを無理に入れてしまうこと」です。
「なんでこのお店に、このメニューがあるの?」
お客様にそう思われてしまうと、お店の信頼性や一貫性は大きく揺らいでしまいます。
【「お店らしくないメニュー」が生まれる背景 】
多くの場合、このような不自然なメニューが生まれるのは、売上が低迷している時です。
「今のままではダメだ」「何か新しいことをしなければ」と焦る気持ちが、流行りのメニューに飛びつかせてしまうのです。
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SNSでバズっているスイーツを急遽取り入れる
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他店で人気のフードを真似して追加する
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コンセプトに合わないドリンクを導入する
一見すると「新しいことに挑戦している」ように見えますが、実際にはお店の強みや軸を見失っているだけのことも多いのです。
【お客様は「一貫性」に安心する】
お客様がお店に通う理由は、必ずしも「新しいものがあるから」ではありません。
むしろ、そのお店に行けば「いつもの心地よさ」があることに安心を覚える人の方が多いのです。
たとえば、
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落ち着いた雰囲気のカフェで、突然「激辛ラーメン」がメニューに追加される
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ヘルシー志向を打ち出している店で、突如「超ジャンキーな唐揚げ丼」が登場する
こうした「らしくない」メニューは、一瞬の話題性にはなるかもしれませんが、長期的にはブランドを損ない、常連客を遠ざけてしまいます。
【「お店らしさ」を守るための3つの視点 】
① コンセプトを軸に考える
お店のコンセプトが「健康志向」なら、トレンドを取り入れる場合も「低糖質」「高タンパク」といった形で軸をブレさせない工夫が必要です。
コンセプトを軸にすれば、新メニューも自然と一貫性を保ちやすくなります。
② お客様が期待する「体験」を意識する
お客様は「そのお店らしい体験」を求めています。
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コーヒーをゆっくり味わえるカフェ
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リラックスできる空間
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体に優しい料理が食べられるお店
この体験に沿わないメニューは、たとえ美味しくても「違和感」として受け取られます。
③ 流行を取り入れるなら「翻訳」する
流行そのものをコピーするのではなく、自店の世界観に翻訳して取り入れることが重要です。
たとえば新たに和テイストの「抹茶スイーツ」を導入する場合でも、器の選び方や盛り付けで「うちのお店らしさ」を残す工夫があれば、違和感を避けられます。
【事例:失敗と成功の分かれ道】
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失敗例:落ち着いたカフェが「映えるワイングラスパフェ」を導入。SNSで一瞬話題になるも、常連客から「雰囲気が壊れた」と敬遠され、結局メニューから外れる。
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成功例:同じカフェが「映える」要素を取り入れつつ、「自家製とろけるバスクチーズケーキ」として展開。既存の雰囲気を崩さずに若い層にもアプローチできた。
違いは「らしさを守ったかどうか」です。
【 まず考えるべきは「自分たちらしさ」】
売上が思うように伸びないときほど、新しいものに手を出したくなるのは当然です。
しかし、その前に立ち止まって考えてほしいのは、「自分たちのお店の強みは何か」「どんなお客様に来てもらいたいのか」ということです。
この問いに答えられないまま新しいメニューを増やすと、結果的に「首を絞める」ことになりかねません。
【まとめ】
カフェ経営にとってメニュー改善や新メニュー開発は欠かせません。
しかし、最も大切なのは「流行に振り回されないこと」です。
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「お店らしさ」を基準に判断する
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お客様が求める体験に沿った展開をする
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流行を自分たちの世界観に翻訳して取り入れる
この3つを意識すれば、メニュー開発は単なる「流行り追い」ではなく、お店のブランドを強化する武器になります。
結局のところ、お客様は「そのお店らしさ」に惹かれて通ってくれるのです。
流行に流される前に、自分たちの軸を再確認すること。それが長く愛されるお店づくりの第一歩です。
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【執筆者】
CREATIVEDEVELOPMENT株式会社
代表取締役
伊藤栄一
飲食店メニュープロデューサー、カフェメニュー開発・開業支援
『メニューの開発実績500種類以上』『専門学校で講師の実績』カフェの現場で5年間シェフを歴任し、様々なメニュー開発を行う。開発メニューの中には、テレビや雑誌に取り上げられた事例も。