カフェ開業はゴールではなくスタート ― 運営を育てる改善力の重要性
カフェを開業するまでには、膨大な準備が必要です。
コンセプト設計、物件選び、内装デザイン、メニュー開発、食器やカトラリーの選定、人材採用…。どれもが大切なプロセスであり、開業に向けて多くの労力と時間を注ぎ込むことになります。
しかし、どれだけ入念に準備を重ねても、実際にお店がオープンしてからは、必ずといっていいほど「予期しない問題」が発生します。
【開業直後に起こりやすいトラブル】
カフェの現場でよくあるのは、オペレーションの混乱です。
「1時間以上お客様を待たせてしまった」
「ドリンクとフードの提供順がバラバラになった」
「レジ対応が追いつかず行列ができてしまった」
これは特別な失敗ではなく、多くの新規開業店舗で発生する“あるある”です。
なぜなら、シミュレーションと実際の現場はまったく別物だからです。
研修やロールプレイングで想定していた動きも、実際のお客様の流れや混雑具合の中では、想定通りにいかないことがほとんどです。
【開業してからが本番】
多くのオーナーが勘違いしやすいのが、「開業したら一安心」という考え方です。
実際には、カフェ経営の本番はオープンしてからなのです。
オープン日はあくまで「スタートライン」。
そこから日々の運営の中で発生する課題を一つひとつ改善し、チームで乗り越えていくことこそが、これから長く続くカフェ経営に必要なプロセスです。
【改善を繰り返して現場を育てる】
では、実際にどのように改善を進めていけばよいのでしょうか。
① 問題を「見える化」する
混乱が起こった場合、その場の忙しさに流されて「仕方ない」で終わらせてしまうと、同じことが繰り返されます。
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提供が遅れた原因は何か
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オーダーが集中した際の弱点はどこか
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誰が何に時間を取られているのか
これらを洗い出していき、改善点を明確にすることが第一歩です。
② 小さな改善を積み重ねる
改善は大きな投資や仕組み変更でなくても構いません。
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カトラリーは事前にセットしてテーブルに置いておく
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セットサラダは、お皿に盛りラップをしてすぐに出せるようにしておく
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食材の配置を見直して、無駄な歩数を減らす
こうした小さな工夫の積み重ねが、大きな改善につながります。
③ スタッフを巻き込む
現場を育てるためには、オーナーや店長だけが改善を考えるのではなく、スタッフ全員で課題を共有し、アイデアを出し合う文化が重要です。
スタッフ自身が改善に関わることで、現場への当事者意識が高まり、自然とお店全体の成長スピードも上がります。
【「改善力」がカフェ経営の生命線】
カフェ業態は「競合が多く、流行り廃りが激しい」傾向にあります。
そんな中で長く愛されるお店になるためには、商品や空間の魅力だけでなく、現場運営の安定性も欠かせません。
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提供が早くて安心できる
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いつ来ても同じクオリティが保たれている
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接客がスムーズで心地よい
あたりまえのように思えるこうした運営の安定感こそが、リピートにつながり、口コミで広がっていくのです。
【まとめ】
カフェ開業はゴールではなく、スタートラインです。
どれだけ準備をしても、オープン後に予期せぬ問題は必ず発生します。
しかし、それは「失敗」ではなく「成長のチャンス」。
改善を繰り返し、現場を育てていく気概こそが、カフェ経営を成功へと導きます。
「オープンしてからが本番」この視点を持てるかどうかが、長く愛されるカフェをつくるための分かれ道なのです。
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【執筆者】
CREATIVEDEVELOPMENT株式会社
代表取締役
伊藤栄一
飲食店メニュープロデューサー、カフェメニュー開発・開業支援
『メニューの開発実績500種類以上』『専門学校で講師の実績』カフェの現場で5年間シェフを歴任し、様々なメニュー開発を行う。開発メニューの中には、テレビや雑誌に取り上げられた事例も。