飲食店開業に必要なメニューの準備とは
はじめに
飲食店を開業するにあたって、メニューの準備は極めて重要な要素のひとつです。お客様に提供する料理やドリンクの内容、価格、見せ方や訴求内容、そしてコンセプトが一致していなければ、お店の魅力を伝えることが難しくなります。
メニューは単に料理や飲み物の一覧というだけでなく、店舗のコンセプトを体現し、来店するお客様の期待に応える重要な要素です。また、メニューの内容次第でお店の利益構造やリピーターの獲得にも大きく影響しますので、開業準備の段階でしっかりとした計画を立て、ターゲットに合ったメニューを作成することが、長期的な成功を左右すると言えるでしょう。
ここでは、飲食店開業時に押さえておきたいメニュー準備のポイントを、コンセプト設定から価格設定、プレゼンテーション、さらにメニュー更新の方法まで、詳しく解説していきます。
1. コンセプトに合ったメニュー作り
飲食店のメニューは、その店のコンセプトと一致していなければなりません。まずは「どのようなお客様に」「どのような体験を提供するか」を明確にしましょう。たとえば、カジュアルなカフェを開業するのであれば、リーズナブルで気軽に楽しめるメニューが求められます。一方、高級レストランの場合は、上質な食材を使った料理や繊細なプレゼンテーションが期待されます。
コンセプトに基づいたメニューの考え方
• 顧客層の特定: 年齢層、性別、ライフスタイルに合わせたメニューを考案する。
• マーケットのニーズ: エリアの人気店の動向を反映させる。
• 提供する体験: コンセプトを体現する料理のスタイル
このように、メニューはお店のアイデンティティを具現化する重要なツールです。お客様に「この店ならではの体験」を提供するためにも、メニューとコンセプトの一貫性を意識しましょう。
2.人気メニューと差別化
飲食店を開業する際、多くの店が取り入れるべき項目として「看板メニューを持つこと」と「他店との差別化」が挙げられます。看板メニューを持つことで、目的客の獲得が期待でき、かつその看板メニューが口コミで広がることもあります。一方で、メニュー全体としても他店との差別化がなければ、競争が激しい飲食業界で戦っていくのは困難な道といえるのかもしれません。
看板メニューの考案
• 王道を見極める: 看板メニューは王道の中にこそ隠れていて、それに磨きをかけることで生み出されます。これには、味だけでなく、見た目やネーミングも重要です。
• リサーチと分析: SNSで取り扱われる頻度の高い商品や業界の中でベーシックな商品をピックアップし、トレンドを加味しながらフックとなるワードを研究します。
差別化戦略
• 独自性のあるメニュー: 競合店と異なる価値の料理やドリンクを考案し、他店では味わえない経験を提供します。特定の食材に特化する、提供スタイルを工夫するなどが差別化の一例です。
• コンセプトに合ったプレゼンテーション: 例えば、お客様の目の前で仕上げるシズル感や食器の華やかさなど、ありきたりでない要素を盛り込もことで印象に残りやすくします。
3. 原価管理と利益率の最適化
メニュー開発の際に見落とされがちなのが、原価と利益率の管理です。飲食業界では、適切な利益率を確保することが経営の安定に直結します。過度に高価な食材を使ったり、調理に時間がかかりすぎるメニューは、利益を圧迫する可能性があります。
原価率と価格設定
• 原価率を計算する: まずは、食材のコストを正確に把握し、原価率を計算します。一般的に、原価率は30%前後が目安とされています。例えば、食材費が300円かかるメニューであれば、販売価格は1000円程度に設定します。
• 市場と競合を調査する: 同じ地域内の競合店のメニュー価格を調査し、適正な価格帯を設定します。高すぎると客足が遠のく一方、安すぎると利益が出なくなるため、バランスが重要です。
高利益メニューの開発
• 低コスト食材の活用: 高価な食材だけに頼らず、低コストながら美味しい食材を活用して利益率を上げるメニューを考案します。例えば、粉類やコーヒー・紅茶などが良い例です。
• 付加価値の提供: 同じ食材を使っていても、調理法や盛り付け、ストーリーづくりによって、価値を高めることができます。特に地元産の食材を使ったり、ヘルシー志向を意識したメニューは、付加価値を提供しやすいです。
4. 視覚的なメニューのプレゼンテーション
メニューの内容が素晴らしくても、その見せ方が悪ければ魅力は半減してしまいます。視覚的に魅力的なメニューを開発することは、集客において重要な役割を果たします。写真、レイアウト、フォント、色使いなど、メニュー全体のデザイン設計に工夫を凝らしましょう。
メニューブックのデザイン
• 美しい写真を使用する: 料理やドリンクの写真は、プロのカメラマンに撮影してもらうことがオススメです。特にSNS映えするような、食欲をそそるビジュアルは強力な武器となります。
• シンプルで読みやすいレイアウト: 情報が詰まりすぎたメニューは、お客様が迷ってしまいます。シンプルかつ、わかりやすいレイアウトで、重要なメニューを際立たせましょう。
• 適切なフォントと色使い: フォントは、店の雰囲気やターゲットに合ったものを選びましょう。また、色使いもメニューの見やすさや印象に大きく影響します。メニュー全体で統一感を持たせることが大切です。
5. メニューの更新とフィードバック
飲食業界は流行やお客様のニーズに合わせて常に変化しています。そのため、開業後も定期的にメニューを見直し、必要に応じて改良することがとても重要となります。また、顧客からのフィードバックを収集し、それを反映させることで、さらに魅力的なメニューを作り上げることも可能です。
フィードバックの収集方法
• 直接的な意見交換: お客様に料理の感想を聞く場面を設けることで、リアルタイムでの改善が可能です。
• アンケートの実施: 店内でアンケートを実施したり、オンラインで意見を募ることで、より多くのフィードバックを得ることができます。
• 売上データの分析: どのメニューが人気があるのか、逆に不人気なメニューは何かをデータで分析し、戦略的にメニューを見直すことが重要です。
季節限定メニューやキャンペーン
• 季節限定メニュー: 季節ごとに新しいメニューを提供することで、常連客にも新しい楽しみを提供します。季節の食材を使ったメニューは、特にお客様に新鮮な印象を与えます。
• プロモーションやキャンペーン: 新しいメニューを導入する際には、プロモーションやキャンペーンなどを行い、集客を図りましょう。特にSNSや地域の広告を活用して、宣伝効果を高めます。
まとめ
飲食店の開業におけるメニューの準備は、お店の成功を左右する非常に重要なステップです。コンセプトに基づいた一貫性のあるメニュー作り、人気メニューと差別化、原価コントロールやプロモーションなど、やることも多岐に渡ります。
半面、やりがいのある業務でもあるので、熱意を持ってしっかりと準備を進めていきましょう。
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【執筆者】
CREATIVEDEVELOPMENT株式会社
代表取締役
伊藤栄一
飲食店メニュープロデューサー
