カフェ開業直後の注意点:無理な集客が逆効果になる理由
カフェや飲食店の経営者にとって、「オープン初日から売上を最大化したい」というのはごく自然な考えです。
特に初めての開業であれば、開業資金の回収を早めたい、話題性を作りたい、SNSでバズらせたい――そんな思いが強くなります。
しかし、現実はそう甘くありません。
特に初めてのカフェ開業の場合、オープン直後はオペレーションの不慣れから提供時間の遅れがほぼ確実に発生します。
この状態で無理な集客をしてしまうと、せっかく来てくれたお客様が「遅い」「接客が雑」「混乱している」という悪い印象を持ち、SNSや口コミで広がってしまうリスクがあります。
本記事では、なぜ開業直後に無理な集客が危険なのか、そして初期運営で失敗しないための考え方について解説します。
【なぜ開業直後は提供が遅れるのか?】
1. オペレーションがまだ固まっていない
どれだけ事前にシミュレーションを重ねても、実際の調理対応では想定外のことが起こります。
- 注文が集中してパンクする
- 皿の洗浄が間に合わない
- 調理ミスで作り直しが発生する
これらが重なることで、キッチンもホールも余裕を失いやすくなります。
2. スタッフの動きがぎこちない
開業時は、まだまだ実践に不慣れな新人スタッフが多く、流れを覚えている最中です。
一つの作業にかかる時間が長くなり、提供スピードに直結します。
3. 設備・動線の使い勝手に慣れていない
実際に営業してみて初めて、動線の悪さや設備の配置ミスに気づくことも少なくありません。
「食器が遠い」「ドリンクの場所と料理の場所が離れている」などが重なると、作業効率が下がります。
【無理な集客が招く悪循環】
オープン初日に満席どころか行列ができるほど集客できたとします。
しかし、提供が遅れ、お客様を長く待たせてしまうとどうなるでしょうか。
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店内で不満が発生
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「まだ来ないの?」という声や表情が増える
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スタッフが焦り、さらにミスが増える
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サービス品質が低下
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作り間違えやオーダー抜け
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イライラして、笑顔が減る
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悪い口コミが拡散
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食べログやGoogleマイビジネスに低評価が書かれる
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SNSでネガティブな投稿が拡散される
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たとえ開業初期の口コミとはいえ、それを見る人からしたらお店の都合は関係ありません。
悪い印象がつくと、集客にも影響が出てきますので、慎重さも大切なのです。
【開業時は「売上最大化」より「満足度最大化」を優先】
初期段階で目指すべきはお客様に好印象を持ってもらい、リピートにつなげることです。
具体的なポイント
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席数をフル稼働せず、あえて余裕を持たせる
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スタッフの動きを観察し、エラーを発見したらオペレーションを改善
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提供時間の計測を行い、遅れの原因を特定
初期は少し余裕のある環境で営業し、その中でミスや遅れを分析・改善していくことで、長期的かつ堅実な売上アップへとつなげていきます。
【実際の失敗事例】
あるカフェでは、開業前からの周知が広がり、オープン初日に多くのお客様が来店しました。
しかし、想定以上の混雑で料理の提供が60分以上かかるなど、接客もバタバタ。
お客様からのお叱りの声も多くいただき、スタッフの疲弊も多大なものでした。
その後、そのような状態が続いたことから営業終了後に全員参加の会議を開き、調理・サービスともに問題点を洗い出し、ひとつひとつの問題点に対して改善プランを決めていき、実行していくとこを繰り替えしました。
そのような改善を繰り返しても、安定するまでにはやはり時間がかかります。
それほどに、円滑なオペレーション構築というものは難しいものなのです。
【まとめ:開業時は「慎重さ」が成功のカギ】
カフェ開業では、初日から売上を追うよりも、初期のお客様満足度を優先する方が長期的に利益をもたらします。
特に初めての開業では、オペレーションの不慣れはほぼ必ず起きます。
だからこそ、オープン直後は慎重に、段階的な集客でお客様満足度を積み上げていくことが重要なのです。
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【執筆者】
CREATIVEDEVELOPMENT株式会社
代表取締役
伊藤栄一
飲食店メニュープロデューサー、カフェメニュー開発・開業支援
『メニューの開発実績500種類以上』『専門学校で講師の実績』カフェの現場で5年間シェフを歴任し、様々なメニュー開発を行う。開発メニューの中には、テレビや雑誌に取り上げられた事例も。