看板メニューは「王道」の中に隠れている ― 売れる商品を生み出す考え方
カフェにおいて「看板メニュー」は、お客様の記憶に残り、再訪や口コミを生む大きな力を持っています。
看板メニューがあるかどうかは、店舗のブランド形成や売上の安定に直結するため、多くの経営者が「どうすれば自店の看板メニューを作れるのか」と悩まれます。
結論から言えば、看板メニューの原型は特別なところにあるのではなく、「王道の中にこそ隠れている」のです。
そしてその王道に、少しの変化や工夫を加えることで、新しい看板メニューが誕生します。
【王道がベースだからこそ受け入れられる】
看板メニューを考える時、奇抜さや独創性に目が行きがちですが、実際にヒットする料理は「誰もが知っている料理」をベースにしていることが多いです。
- ハンバーグ
- カレー
- パスタ
- サンドイッチ
- パフェ
こうしたメニューはすでに多くの人に親しまれており、イメージ喚起がしやすく「食べてみたい」と思わせるハードルが低いのが特徴です。
そこに「他店にはない要素」を組み合わせることで、看板メニューとして差別化が可能になります。
【味だけでなく「見た目」と「ネーミング」が重要】
お客様の購買行動において、味はもちろん大事ですが、それ以上に ファーストインパクトをどう作るか が重要です。
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見た目のインパクト
SNS時代においては、「写真映えするかどうか」が来店動機に直結します。盛り付けや器の工夫、色のコントラストが看板メニュー作りには欠かせません。 -
ネーミングの工夫
単なる「チーズケーキ」ではなく、「雲のように軽いチーズケーキ」と言われると、興味が湧きます。名前にストーリーやキャッチーさを加えるだけで、オーダー率は大きく変わります。
【王道をアレンジする3つのアプローチ】
① 素材で差別化する
同じカレーでも、スパイスを本格的に調合する、地元野菜をふんだんに使う、グルテンフリーにするなど、素材選びで「他にはない特徴」を打ち出せます。
② 見せ方で差別化する
高さを出す盛り付けや、大きさで驚かせる方法もあれば、テーブル上で仕上げて提供する方法もあります。料理そのものはシンプルでも、見せ方の工夫だけで記憶に残る一皿に変わります。
③ ネーミングで差別化する
「プリン」よりも「昔ながらの固めプリン」、「オムライス」よりも「ふわとろ卵の幸せオムライス」。王道の名前に「形容詞」や「ストーリー」を加えるだけで、看板メニュー感が増します。
【看板メニューがある店とない店の違い】
看板メニューが存在するお店は、お客様にとって「そのお店に行く理由」が明確です。
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「あの店のカレーを食べたい」
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「あそこのプリンが無性に食べたくなる」
一方で、看板メニューがないお店は「なんとなく行ってもいいけれど、代わりは他にもある」と思われてしまい、リピート率が下がります。
カフェは常に競争環境にさらされています。その中で勝ち残るためには、「これを食べるならこの店」という一皿を作れるかどうか が決定的に重要なのです。
【看板メニュー開発のステップ】
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王道メニューを選ぶ
誰もが知っている料理をベースに選ぶ。 -
ターゲットに合わせたアレンジを加える
健康志向、ボリューム重視、SNS映えなど、狙う顧客層を意識する。 -
見た目・ネーミングを磨く
写真映えする盛り付け、覚えやすくキャッチーな名前を考える。 -
試作とフィードバックを繰り返す
常連客やスタッフからの意見をもとに改良を重ねる。
【まとめ】
看板メニューを作ろうとすると、どうしても「新しいものを」と考えがちですが、実際の答えはもっとシンプルです。王道の中にこそ看板メニューの原型は隠れているのです。
味に工夫を加え、見た目で惹きつけ、ネーミングで記憶に残す。たったそれだけで、定番が「特別な一皿」へと昇華し、やがてお客様にとって欠かせない看板メニューへと育っていきます。
カフェ経営の中で「看板メニュー作り」は避けて通れないテーマ。もしまだ自店の看板メニューが定まっていないなら、まずは王道からアレンジを始めてみるのが最も確実な一歩です。
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【執筆者】
CREATIVEDEVELOPMENT株式会社
代表取締役
伊藤栄一
飲食店メニュープロデューサー、カフェメニュー開発・開業支援
『メニューの開発実績500種類以上』『専門学校で講師の実績』カフェの現場で5年間シェフを歴任し、様々なメニュー開発を行う。開発メニューの中には、テレビや雑誌に取り上げられた事例も。